グラースはフランス南東部、アルプ=マリティーム県に位置する町で、18世紀から香水産業の中心地として知られています。この地で栽培されるロサ・センティフォリア(キャベツローズ)は、五月の短い収穫期にのみ採取できる原料です。その希少性と香りの複雑さが、調香師に選ばれ続ける理由です。
ロサ・センティフォリアの特性 ¶
ロサ・センティフォリアはダマスクローズ(Rosa damascena)と並んで、香水に使われる最も重要な薔薇の品種です。花びらが多く、甘みの中にわずかな蜂蜜のような重みを持つ香りが特徴です。グラースの気候と土壌がこの品種の栽培に適しており、他の産地で育てたものとは香りの印象が異なります。収穫期は五月の約三週間のみです。
収穫の方法と絶対香の採取 ¶
ロサ・センティフォリアの絶対香は、溶剤抽出法で採取されます。まず花をヘキサンなどの溶剤に浸けてコンクリートと呼ばれる半固体の原料を得ます。次にアルコールで洗浄し、冷却してワックス成分を除去することで絶対香が得られます。1kgの絶対香を得るには約1,000kgの花が必要です。Quaint Cedarwoodはジャン=ポール・ベルナールの農場から直接仕入れています。
「Rose de Grasse」の処方 ¶
「Rose de Grasse」は、グラース産ロサ・センティフォリアの絶対香を中心に、ムスクと微量のポワブル・ノワール(黒胡椒)で構成されています。黒胡椒を加えることで、薔薇の甘みに軽いスパイスの緊張感が生まれます。Élise Morelが2018年にこのコンポジションを作った際、最初の試作では黒胡椒の量が多すぎて薔薇の印象が消えてしまいました。現在の処方は四回目の試作で完成したものです。
産地直接調達の意味 ¶
グラースの薔薇の絶対香は、仲介業者を通じて購入することもできます。しかし産地を直接訪れることで、その年の収穫状況、農家の判断、原料の状態を自分の目と鼻で確認できます。Élise Morelが毎年五月にグラースへ向かうのは、この確認のためです。原料の状態によって処方を微調整するためには、産地の情報が不可欠です。
グラースの薔薇は、毎年同じ場所で育ちながら、毎年少しずつ異なる香りを持ちます。その変化を処方に反映させることが、Quaint Cedarwoodの「Rose de Grasse」が毎年わずかに異なる理由です。