ネロリはビターオレンジ(Citrus aurantium)の花から採取される精油です。名前の由来は17世紀のイタリア、ネロラ公国の公妃アンナ・マリア・オルシーニで、彼女が手袋にこの香りをつけることを流行させたとされています。現在の主要産地はチュニジア、モロッコ、エジプトで、それぞれ香りの印象が異なります。

収穫のタイミングと花の状態

ネロリの品質は収穫のタイミングに大きく左右されます。花が完全に開く前、蕾が開きかけた状態で摘み取ることで、揮発性の高い芳香成分が最も多く含まれます。収穫は夜明け前から始まり、気温が上がる前に終わらせます。チュニジアの農家では、一人の作業者が一日に約10kgの花を手摘みします。1kgのネロリ精油を得るには約1,000kgの花が必要です。

水蒸気蒸留とアンフルラージュの違い

ネロリの精油採取には主に水蒸気蒸留が使われます。花を蒸留釜に入れ、水蒸気を通すことで精油成分を揮発させ、冷却して液体として回収します。かつて使われていたアンフルラージュ(油脂吸着法)は現在ほとんど行われていませんが、この方法で得られる絶対香は蒸留精油とは異なる、より複雑な香りを持ちます。Quaint Cedarwoodでは蒸留精油を使用しています。

産地による香りの違い

チュニジア産のネロリは花の甘みが強く、プチグレン(葉と枝から採取)との相性が良いとされています。モロッコ産はより緑っぽい印象で、エジプト産は重めのフローラルな特性を持ちます。Élise Morelが「Néroli Blanc」にチュニジア産を選んでいるのは、夏の夜明けの庭の空気という処方のテーマに、花の甘みと軽さが合っているからです。

香水の中でのネロリの位置づけ

ネロリはトップノートからハートノートにかけて機能する原料です。揮発速度は中程度で、最初の明るい印象を作りながら、時間をかけてムスクやウッド系のベースノートへと移行します。単独で使うと清潔感のある花の香りですが、ベチバーや白檀と組み合わせると、深みと持続性が加わります。

ネロリは、採取に手間がかかる分だけ、その香りに具体的な場所と時間の記憶が宿ります。Quaint Cedarwoodの「Néroli Blanc」は、チュニジアの夜明け前の農場の空気を、できる限りそのまま瓶に閉じ込めようとした試みです。